「沈黙で失敗するものはない。」

このいささか風変わりな言葉は、さまざまな社会的地位にあって、成功を収め人に抜きんでた私の親友の一人が、いつも口にしていた文句であった。実際、きわめて多くの面倒で不愉快な人生のいざこざも、しばしばこのやり方で、たやすくきり抜けることができる。これに反して、多くの人が愛好する、いわゆる「自分の意見発表」は、たいてい、ただ双方の意見のくいちがいを一層きわだたせるだけで、時には事態の収拾のつかないものにしてしまうことがある。

  "眠られぬ夜のために 第一部" - カール・ヒルティ